次の回路の電圧利得を求め、 C,RLに適当な値を入れ、 周波数と利得の関係を示すグラフ(両対数)を書きなさい。
角周波数ωの正弦波を入力して、複素数を用いた回路方程式を 解きます。回路を流れる電流を Iとします。
V1 = (1/jωC + RL)I V2 = RLI RL V2 = ------------ V1 1/jωC + RL jωCRL Av = --------- 1+jωCRL
これに対して、 ωCRLが 1 よりかなり大き い時と、かなり小さい時とに場合分けし、近似を考えます。 ここでω0 = 1/(CRL) と置くと次のように 分析できます。
jω/ω0 Av = --------- 1+jω/ω0 jω/ω0 ≒ -------- 1 = jω/ω0 = (ω/ω0)ejπ/2
jω/ω0 Av = --------- 1+jω/ω0 j/ω0 = -------- 1/ω+j/ω0 j/ω0 ≒ -------- j/ω0 = 1
つまり、電圧利得の大きさは周波数が 1/CRLより十分小さい時は周波数に比例し、 周波数が 1/CRLより十分大きい時はほぼ 1 になることがわかります。 また、位相のずれは周波数が 1/CRLより 十分小さい時は 90 度遅れ、 周波数が 1/CRLより十分大き い時はほぼずれないことがわかります。
従って、電圧利得の大きさを両対数のグラフで書くと 1/CRL より左側の領域では 6dB/oct の右 上がりの直線、右側の領域は 1 になります。
トランジスタには遮断、活性、飽和の三状態があり、線形電子回路に使用する場 合は、活性状態にしなければなりません。 そのためには FET ではゲート、ソース間、J-TR ではベース、エミッタ間に一定の電圧をか ける必要があります。 これをバイアスといいます。
自己バイアス回路では電源やアースと端子が抵抗で接続されます。 また、J-TR 回路ではベース電流を制限しなければなりませんので、どのようなバイ アス回路でも、電源やアースと端子が抵抗で接続されます。
一方、バイアスをかける端子と信号の入力の端子は共用されます。 従って、信号の解析をする場合、信号線は抵抗を通して接地されると考えなけ ればなりません。 よって、トランジスタ増幅回路を線形四端子網と考えた時、バイアス回路を 考慮した等価回路はつぎのようになります。
複数の増幅回路を結合すると大きな利得が得られます。 しかし、単純に結合して良いわけではありません。 ここでは結合のし方とその特性を議論します。
以下の議論では増幅回路1に増幅回路2を結合することを考えます。増幅器の記 号を次のように導入します。
前節で復習したように、トランジスタ増幅回路の入力端子にはバイアス電圧が 必要です。 したがって、増幅回路 1 の出力を増幅回路2に接続する場合、増幅回路 1 の 出力の直流電圧を増幅回路 2 のバイアス電圧に調整する必要があります。
この場合、出力利得は追加した抵抗により落ちます。さらに、バイアス電圧の 変動は回路の特性を大きく変えるため、微妙な出力電圧の変動が増幅回路2の 動作に影響を与えてしまいます。
このような問題に対して、教科書ではいくつかの対応策を紹介しています(pp.103-104)。
直接結合では、出力の直流電圧が問題でしたので、増幅回路1と増幅回路2をコ ンデンサで接続することを考えます。 すると、増幅回路1の直流電圧が増幅回路2に直接行きません。
但し、コンデンサが存在するため回路の特性が変化します。 ここでは増幅回路1の特性は考えず、コンデンサにより結合することで、どの ように特性が変化するかを次の等価回路により調べることにします。 また、簡単のため h12=0, h22=∞ とします。
1 1 合成インピーダンス = ------------ + ----- 1 1 jωC --- + --- RB h11 RBh11 1 = ------- + ------ RB+h11 jωC jωCRBh11+RB+h11 = ---------------- jωC(RB+h11)
jωC(RB+h11) I1 = --------------- V1 jωCRBh11+RB+h11
RB I'1 = ------ I1 RB+h11 jωCRB = --------------- V1 jωCRBh11+RB+h11
RC I2 = ------ (-h21I'1) RC+RL RC RB = - ------ h21 -------- I1 RC+RL RB+h11 RC RB AC = - ------ h21 -------- RC+RL RB+h11
V2 = RLI2 RCRL jωCRB = - ------ h21 --------------- V1 RC+RL jωCRBh11+RB+h11 RCRL jωCRB Av = - ------ h21 --------------- RC+RL jωCRBh11+RB+h11
Avの複素数を含む部分を、 1+xとなるように変形し、x≪1 の時は 1, x≫1 の時は x と近似することにより、特性を調べま す。 右側の分子分母をそれぞれjω CRBh11で 割ります。
RCRL h21 1 Av = - ------ ---- --------------- RC+RL h11 RB+h11 1 + --------- jωCRBh11
ここで (RB+h11)/( ωCRBh11) と 1 との大小関係を考えて分析します。 ω0= (RB+h11) /(CRBh11) と置くと、これは ωとω0 の大小関係を 考えることになります。 一方、βをつぎのように置きます。
RCRL h21 β = - ------ ---- RC+RL h11
すると、Av はつぎのように変形できます。
1 Av = β ------------- 1 + ω0/(jω)
1 Av = β --------- ω0/(jω) 1 = β ---- jω ω0
1 Av = β --------- 1 = β
従って周波数特性を表す両対数のグラフは次のようになります。
また、 ω≪ω0 の時は位相が 90 度遅れますが、 ω≫ω0 の時はほぼ位相はずれません。
もし、何の部品も付加せず直接接続が可能だった場合の利得を求めます。
1 合成インピーダンス = ------------ 1 1 --- + --- RB h11 RBh11 = ------- RB+h11
RB+h11 I1 = -------- V1 RBh11
RB I'1 = ------ I1 RB+h11 1 = ---- V1 h11
RC I2 = ------ h21I'1 RC+RL RC RB = ------ h21 -------- I1 RC+RL RB+h11 RC RB AC = ------ h21 -------- RC+RL RB+h11
V2 = RLI2 RCRL 1 = ------ h21 ---- V1 RC+RL h11 RCRL h21 Av = ------ ----- RC+RL h11 =β
結局、電圧利得は周波数に関わらず β で一定になります。
次の FET による増幅回路の周波数特性を求め、グラフを書きなさい。 但し、相互コンダクタンスは gm で表し、 ドレイン抵抗は∞とします。
等価回路は次のようになります。